コラム

海外に資産がある場合の遺産分割

2024.01.23

海外に資産がある場合の遺産分割

海外に資産がある場合の遺産分割

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

仕事で海外へ赴任すること、結婚して海外に生活拠点を移すことなどにより、海外で暮らすことが珍しくなくなってから2、30年が経ちました。

こうした長期の海外在住者が亡くなると、遺産の一部が海外にある状態で相続が開始されます。

本コラムでは、遺産の一部が海外にある場合の、相続手続きの留意点について解説します

相続に関するルールは被相続人の国籍法が適用される

相続に関するルールは被相続人の国籍法が適用される

相続に関するルールは、被相続人の国籍法が適用されます。そのため、遺産の一部が海外の資産であったとしても、亡くなったのが日本人である限り、日本の法律に従って、遺産の分配方法が決まります。

相続人の一部に外国籍者が居たとしても、仮に相続人の全員が海外に居たとしても、日本の法律、つまり、民法に従って、法定相続分が定められることになります。

しかし、被相続人も相続人全員がともに海外在住であり、日本の裁判管轄が認められない場合があります。この場合は、裁判管轄がある外国の法律(国際私法)により、被相続人が居住していた国の法律が適用される可能性があります。

海外の遺産(資産)の調査は複雑

被相続人の海外にある資産について全く手がかりがない場合、調査してそれを特定することはかなり困難です。

日本の財産の場合は、自宅近隣の金融機関に照会をかけたり、自治体に名寄帳を請求することで、預金や不動産を特定できるケースが多いです。一方で海外では、当該国の弁護士やエージェントに依頼をするしかなく、相当な費用がかかってしまいます。

遺産の規模が全く分からない中で数十万円以上の費用をかけることは躊躇することもあるでしょう。

預金の預け先や土地が特定できていれば、ネットのサイトなどで調べたり、問い合わせ先に電話やメールをして、手続きの方法を知ることができます。

その際、日本の戸籍謄本や遺産分割協議書を提出することが想定されますが、当然、当該国の言語に翻訳する必要があります。

また、戸籍謄本などの公文書についてはそれが本物であることを当該国の金融機関や公的機関に証明するためには、外務省の認証(アポスティーユ)が必要となります。

さらに、諸外国には印鑑登録制度がないので、遺産分割協議書の署名が本物であることを証明するために、公証役場でサイン証明を取得する必要があります。

実際の遺産分割の手続きについて

実際の遺産分割の手続きについて

協議の対象となるのは、相続人の一部が当該資産がある国に居住している場合

海外に資産がある相続が実際に遺産分割協議の対象となるのは、相続人の一部が当該資産がある国に居住している場合でしょう

被相続人だけが長年海外に居住していて、相続人全員が日本に居住しているケースでは、海外の資産を特定することができず、実際に遺産分割を実施することができない可能性が高くなります。

相続人のうち一人でも資産が所在する外国へ居住していれば、その相続人が資産の詳細を把握しているため、遺産分割協議において有利な立場にあると言えるでしょう。

しかし、遺産が所在する国に住む相続人にとっても、日本にいる相続人の協力なくしては遺産分割協議を進めることができません。

そのため、日本にいる相続人は、海外居住相続人に遺産に関する資料の提出を求め、提出された資料から合理的に推認できる別の預貯金等の資料をさらに請求していくことになります。

海外から送られてきた資料が翻訳されていない場合

また、海外から送られてきた資料が翻訳されていない場合でも、日本で翻訳することは十分可能です。翻訳費用は最終的に遺産から拠出されるため、翻訳費用を惜しむべきでないでしょう。

海外居住の相続人が自ら翻訳したとしても、その信頼性は必ずしも高くありません。日本側で翻訳人へ依頼して翻訳することが望ましいです。

海外の資産をめぐる裁判では、国外での執行が認められるか確認を

仮に、遺産分割が日本の家庭裁判所の管轄が認められて審判まで手続きが進んだ場合、海外の資産を日本の家事審判に基づいて差押えができるかが問題となります。

現地の裁判所において、日本の審判の執行が認められるかの確認が重要になってきます。

そのため、合意ができず裁判が避けられない場合、国外での執行手続にも配慮できる弁護士へ相談する必要があります。

海外に資産がある相続の場合、確認すべきことは多岐にわたる

遺産の一部が海外にある場合、

  1. どこの国の法律が適用されるか(準拠法の問題)
  2. 日本の家庭裁判所で遺産分割調停、審判ができるか(国際裁判管轄の問題)
  3. 海外資産の調査の方法
  4. 海外資産の払い戻しのために日本で必要な書類についての認証
  5. 日本での家事審判が海外の裁判所で承認されるか

等、日本だけに資産がある場合との比較で確認すべき事項が多岐にわたります。

弁護士へ相談する場合は、最初に海外にも遺産が(多く)あることを伝えたうえで、対応可能かどうか、費用がどれくらい余計にかかるかなど、予め確認した方がよいでしょう。

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