コラム
相続放棄後の不動産管理義務は誰に残る?人に任せる方法や注意点を解説!
2024.01.16
相続放棄後の不動産管理義務は誰に残る?人に任せる方法や注意点を解説!
「相続放棄後の不動産管理義務は誰に残る?」「相続放棄した人が不動産管理を免れる方法は?」などと気になっていませんか?
相続放棄後の不動産管理義務は、現に占有している者に残ります。もし不動産管理を怠ると、損害賠償請求をされる恐れもあるため、注意が必要です。
本記事では、相続放棄後の不動産管理義務について詳しく解説します。不動産管理を怠ることで起きるリスクや免れるための方法や事例もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続放棄後の不動産管理義務は現に占有している者に残る
相続放棄後、不動産の管理義務は現在その不動産を占有している人に移行します。法的に相続放棄を行ったとしても、不動産を占有している限りは管理の責任を問われるため注意が必要です。
2023年4月の民法改正により規定が変更
2023年4月の民法改正により、相続放棄後の不動産管理義務の規定が変更されました。従来の民法では、相続放棄をした者は相続人となった者が財産の管理を始められるまで財産の管理を継続し続ける必要がありました。
一方、改正後は相続放棄をした者は相続人が財産の管理を始められるまで財産を保存しなければならなくなったのです。民法改正により、管理義務を負う対象者が限定されたという点が大きな変更点と言えます。
「管理義務」から「保存義務」に変更
民法改正により、不動産に対する「管理義務」は「保存義務」に変更されました。民法改正による変更は、不動産の占有者に対する義務の性質を変えるものです。
保存義務とは不動産を維持することに加え、価値を保持して適切な状態で維持する必要があります。建物の修繕や敷地の整備など、不動産の価値を維持するための対策が求められるようになったのです。
不動産を保有する者は、単に不動産を放置するのではなく、価値を保ち続ける責任を負うことになります。
「相続財産管理人」から「相続財産清算人」に変更
民法の改正により、「相続財産管理人」という概念が「相続財産清算人」に変更されました。名前が変更されたことにより、相続財産に関する管理者の役割と責任を再定義するものとなりました。
相続財産清算人は単に相続財産の管理だけでなく、負債の清算や財産の分配といった広範な役割を担います。より効率的かつ公正に財産の分配が行われるようになり、相続に関するトラブルを未然に解決できるようになりました。
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相続放棄後の不動産管理義務が免れる具体事例
相続放棄後、不動産の管理義務は現在その不動産を占有している人に移行します。ただし、状況によっては管理義務を免れる場合もあります。
以下に具体的事例をまとめました。
- 相続放棄者が被相続人から離れて暮らしている
- 相続放棄をした後に不動産を第三者に売却している
- 相続放棄者の配偶者や子供が不動産を占有している
それぞれ詳しく解説します。
相続放棄者が被相続人から離れて暮らしている
相続放棄者が被相続人から地理的に離れた場所で暮らしている場合、不動産管理義務から免れる可能性があります。例えば、相続放棄者が海外に住んでいて被相続人の不動産が日本にある場合に免除されることが多いです。
しかし、相続放棄者が海外に住んでいるが、日本に帰国して不動産の管理を行うことができる場合、管理義務を負う可能性があります。相続放棄者が不動産の管理を行うことが困難であると判断されるかどうかは、個別の事案によって判断されるため、必ずしも免除されるとは限りません。
相続放棄をした後に不動産を第三者に売却している
相続放棄をした後、相続財産清算人が不動産を第三者に売却した場合も管理義務から免れる場合があります。不動産の所有権は売却した人に移転するため、元の相続放棄者には管理義務が存在しません。
ただし、売却前の不動産の管理が可能であった期間については管理義務を負ったことになります。売却が完了するまでは管理義務が残るため注意しましょう。
相続放棄者の配偶者や子供が不動産を占有している
相続放棄者自身は占有しておらず、配偶者や子供が不動産を占有している場合、放棄者は管理義務から解放される可能性が高いです。例えば、相続放棄者の子供や配偶者が放棄した不動産に住み続けている場合、子供や配偶者が管理責任を負う結果となります。
しかし、完全に解放されるかどうかは、個別の事案によって判断されるため、注意が必要です。
相続放棄後に不動産管理を怠ることで起きるリスク
相続放棄後に不動産管理を怠ると以下のようなリスクが発生します。
- 損害賠償請求が発生する
- 滞納していた固定資産税の延滞税が所有者確定後、新所有者から損害賠償として請求される
- 不動産の価値が減少する
それぞれ詳しく解説します。
損害賠償請求が発生する
不動産の管理を怠ったせいで第三者に損害が発生した場合、損害賠償請求が発生する恐れがあります。事例をまとめると以下の通りです。
- 所有している不動産が荒廃している
- 家がゴミ屋敷状態で近隣住民に迷惑をかけている
- 外壁が壊れて事故を引き起こした
不動産の適切な管理と維持を怠ることで、法的な責任を問われる可能性が高まります。そのため、第三者に迷惑がかからないように管理を徹底するといった事前の対策が必要です。
税金の滞納が発生する
不動産の管理を怠ると、固定資産税などの税金の滞納が発生する可能性が高いです。不動産にかかる税金は、所有者が変わらない限り継続して発生します。
相続放棄をしても、固定資産税そのものが消滅するわけでなく、滞納額の累積により、本来の税金とは別に延滞税が発生します。本来の固定資産税は滞納が積み重なっても最終的に新所有者が支払うことになりますが、延滞税については、相続放棄者の管理責任が問われ、相続放棄後、後順位の相続人に何ら知らせないなど、漫然とした対応をしていると、延滞税分を損害賠償として請求されるおそれがあります。
不動産の価値が減少する
不動産の適切な管理が行われない場合、不動産自体の価値が時間とともに減少するリスクが発生します。例えば、以下の事例に当てはまる場合は価値が下がる可能性は高いです。
- 不動産の外壁や屋根などの塗装が剥がれている
- 雨漏りが発生している
- 不動産の設備が古かったり故障したりしている
- 不動産の敷地が荒れ果てている
建物の老朽化や敷地の荒廃は、不動産の市場価値を下げる大きな要因です。不動産が荒れ放題になっていると近隣住民とのトラブルになり、さらに価値を下げる要因となる恐れもあるため注意しましょう。
相続放棄した人が不動産管理を免れる方法
相続放棄した人が不動産管理を免れたい場合、以下の方法を駆使しましょう。
- 相続財産清算人を申し立てる
- 相続権を他の人に移す
それぞれ詳しく解説します。
相続財産清算人を申し立てる
相続財産清算人を申し立てることは、不動産管理の責任から免れる1つの方法です。相続財産清算人は、相続財産の管理や分配を行う法的な役割を担います。
申立を行い、選任された相続財産清算人に当該不動産を引き渡せば(建物の鍵や権利証などの重要書類を交付するなど)相続放棄者は不動産の管理義務から解放され、清算人が管理の責任全てを負う結果となります。相続放棄者は管理に一切関わることもなくなるため、法的な責任を避けるための有効な手段と言えるでしょう。
相続権を他の人に移す
相続権を他の人に移すことも不動産管理の義務から逃れる方法の1つです。相続放棄者が他の相続人に自分の相続権を譲渡することで、不動産の管理を免れます。
承継させる旨を相続人に伝える前に放棄の手続きを行うことで、相続権を他の人に移すことが可能です。また、相続放棄者が相続財産管理人選任の申立てを行い、家庭裁判所が相続財産管理人を選任しても不動産管理を免れます。
なお、相続放棄者が相続財産管理人を選任する場合は、相続放棄の申述期限内に手続きを行う必要があるため注意しましょう。
相続放棄と不動産管理に関するよくある質問
最後に、相続放棄と不動産管理に関するよくある質問に回答します。
- 空き家になった不動産の管理義務は?
- 相続放棄した家が倒壊した場合の管理義務は?
空き家になった不動産の管理義務は?
空き家になった不動産は、基本的に相続人が管理義務を負います。もし相続放棄をしたとしても、不動産を占有している場合はそのまま義務が発生するため注意が必要です。
もし管理を免れたいなら、相続財産管理人を選任したり相続権を他の人に移すなどの対策を施しましょう。
相続放棄した家が倒壊した場合の管理義務は?
相続放棄した家が倒壊した場合、不動産を占有している場合に限り、相続放棄をした人が管理義務を負います。もし不動産の倒壊によって第三者に損害を与えた場合、相続放棄者は損害賠償責任を負う可能性があるため注意が必要です。
ただし、不動産を占有してなかった場合の管理義務は、「相続財産管理人」または「国庫」に帰属します。また、相続財産管理人が選任されている場合、相続財産管理人が相続財産の管理義務を負います。
まとめ
相続放棄後の不動産管理義務は、現に占有している者に残ります。もし不動産管理を怠ると、損害賠償請求や税金の滞納が発生する恐れもあるため、事前の対策が必要です。
しかし、相続放棄の不動産管理に関する手続きは複雑で難しく、相続放棄の申述期限内に完了する必要があります。また、手続きを誤ると、不動産の管理義務を負い続けることにもなりかねません。複雑で難しい手続きを弁護士に依頼することで、安心して手続きを進めることができます。
船橋・習志野法律事務所では、相続や相続放棄に関する支援をしています。相続でお悩みの場合や、生前に相続に関する対策をしておきたい場合はぜひお気軽にご相談ください。