コラム

行方不明になった相続人がいる場合の遺産分割協議

2022.02.26

行方不明になった相続人がいる場合の遺産分割協議

行方不明になった相続人がいる場合の遺産分割協議

船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村です。

約10年前の東日本大震災では多くの方が亡くなり未だ行方不明の方もいます。大規模な土砂災害などで行方不明になる方もおります。その他、音信不通となり連絡が取れないといったこともあります。

相続が始まった際に、相続人の中にこのような行方不明者がいる場合に、遺産分割協議を進めるにはどのようにすればよいか、解説します。 

公示送達の方法を用いる

公示送達の方法を用いる

相続人が生きていることが明らかであるが、連絡が取れなかったり、現時点での居場所が分からないといった場合があります。このパターンであれば、他の相続人間で遺産分割協議が整っていれば、被相続人の死亡地を管轄する家庭裁判所に遺産分割の審判を申立します。

そして、公示送達の申立をして、行方不明の相続人が欠席したまま審判の言い渡しをする手続きを進めます。

手続きの流れとしては、裁判所の掲示板に遺産分割の審判が申し立てられた旨の告知をして2週間以内に行方不明になった相続人が現れなければ、審判の言い渡しをするというものです。

この手続きを利用するには、行方不明になる前の最後の住所地を特定する必要があります。住民票の取り寄せが最後の住所地を特定する簡便な方法ですが、住民票は本人が居なくなってから5年間で自治体が職権により登録を削除してしまいます。なので、長期間行方不明の相続人については、最後の住所地を特定できない可能性があります。

また、公示送達が上手くいったとしても遺産分割の審判は万能ではありません。「亡くなった人の財産は全て相続人に分配しなければならないのか」(※リンク添付)のコラムで述べたように、遺産とみなされない財産については、審判で決めることができません。

そのため、公示送達の方法では、一部の財産については帰属が決まらないままになってしまうかもしれません。そもそも、審判は話し合いでなく裁判官の一方的な命令なので形式的に相続分に沿った遺産の分配方法を決定することしかできません。

不在者財産管理人の選任を申し立てる

不在者財産管理人の選任を申し立てる

不在者財産管理人とは、行方不明になった人に代わって財産管理をする専門職のことです。

家庭裁判所にその選任を申し立てることで、家庭裁判所が弁護士、司法書士、税理士などの専門職を選任してくれます。

そして、選任された不在者財産管理人が行方不明になっている相続人に代わり遺産分割協議に参加することができます。そのため、実際に相続人全員が参加しているときと同様の話し合いを進めることができ、柔軟な遺産分割協議を成立させることが期待できます。

もっとも、不在者財産管理人には多額の報酬が発生し30万円程度から多いときには100万円を超えることがあります。なので、不在者財産管理人の選任申立に適しているのは、遺産が豊富にあり不在者財産管理人の報酬を十分に賄えて、かつ、遺産の種類が多岐にわたり、話し合いによる解決が望ましい事例です。

逆に、遺産のほとんどが現金と預金だけであれば、審判により法定相続分に沿った分配が容易に実現できます。その場合には公示送達の方法が適しているでしょう。

失踪宣告の申立

失踪宣告の申立

大地震や土砂災害などで行方不明になってしまった相続人がいる場合には、その相続人に対する失踪宣告の申立ができます。失踪宣告の申立は家庭裁判所に対して行い、これが認められると行方不明の相続人は死亡したものと扱われます。

大規模な自然災害や航空機の墜落事故などで行方不明になった場合は、それらの災害や事故があった時から1年後以降に申立ができ、失踪宣告が認められると災害、事故発生時点に遡って死亡したと扱われます。

大規模災害や事故がなくても、音信不通になってから7年経過した場合にも失踪宣告の申立ができます。ただ、死亡したと扱うという重大な効果が発生するので、単なる7年の経過で当然に認められるものではなく、所在の調査を尽くしたうえで初めて認められるものです。

いずれの場合も失踪宣告が認められると、行方不明の相続人は死亡したことになり、さらにその代襲相続人と遺産分割の話し合いを進めることができます。

まとめ

行方不明の相続人がいる場合の対処方法は上記が主なパターンです。

ただ、そのうち、失踪宣告は死亡したものと扱う手段であるから、災害や事故等で亡くなった可能性が高い場合のみ選択すべきものであって、単に長く連絡が取れないというだけで安易に選択すべき手段ではありません。

行方不明の相続人が生存している可能性があれば、不在者財産管理人の選任か公示送達の方法を用いるのが適当でしょう。遺産の構成が預貯金、現金がほとんどであれば、公示送達がもっとも早期に解決する手段といえます。

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