コラム

祖父母や両親が連続で死亡、相続が相次いで開始する場合の相続放棄

2021.11.26

祖父母や両親が連続で死亡、相続が相次いで開始する場合の相続放棄

祖父母や両親が連続で死亡、相続が相次いで開始する場合の相続放棄

こんにちは。船橋習志野台法律事務所の弁護士の中村亮です。

相続は、通常、一人の被相続人について開始されるものです。ただ、まれに、祖父が亡くなってから相続の承認とみなされる3か月の期間が経過しないうちに、父が亡くなり、祖父と父の相続が同時並行することがあります。

このような場合に、相続放棄は祖父と父で同時に行うべきか、個別に判断することができるかといった問題が生じます。

このコラムでは、複数の相続が同時に発生した場合についての対応方法について解説します。

承認か相続放棄かの判断期間の3カ月の起算点について

承認か相続放棄かの判断期間の3カ月の起算点について

相続放棄をするかは亡くなってから3ヶ月以内に判断をする

相続放棄は、相続開始を知ったとき(借金の存在を知ったとき)から3カ月以内にしなければならないとのルールがあります。そうすると、父の相続についてはこのルールどおり、父が亡くなった時から3カ月以内に相続放棄をすれば家庭裁判所はこれを受理します。

では、祖父の相続についてはいつの時点から3カ月になるでしょうか?

相続放棄の判断期間は個別に考えてよい

これについては民法で規定があり、祖父の相続についても、孫は父が亡くなった時点で父の(祖父の)の相続人としての地位を承継するので、孫は父が亡くなった時から3カ月以内であれば、祖父の相続についても相続放棄ができます。

言い換えれば、祖父が亡くなって2カ月後に父が亡くなっても、祖父の相続放棄の期間は残り1か月でなく、父が亡くなった時点から3カ月の期間がスタートします。

「借金の存在を知った時」という例外ルールも知っておこう

また、相続放棄の3カ月の期間については、借金の存在を知った時という例外のルールも存在します。この例外のルールについても、祖父と父で個別に起算点が設定されることになります。

例えば、父と孫は同居していたため、父の借金については生前から孫が把握していた場合には、父の死亡から3カ月以内に父の相続放棄をする必要があります。これに対して、祖父の借金について孫が知らなかった場合に、祖父、父と相次いで亡くなり、祖父の死亡から1年後に祖父の債権者から借金返済の催告のハガキが孫に届いた場合には、そのハガキが届いた時点から3カ月以内に祖父の分の相続放棄ができます。つまり、先に亡くなった祖父の方の相続放棄の3カ月の起算点が遅くなることもあり得るのです。

相続により父の法的地位を全て承継する効果が生じるのは相続を承認した以降であるから、相続放棄をするか否かの場面では、父の相続と祖父の相続で個別に検討することができます。

祖父だけ相続放棄、父だけ相続放棄ということができるか

祖父だけ相続放棄、父だけ相続放棄ということができるか

祖父だけ、父だけの相続放棄は可能

例えば、祖父には豊富な預貯金があるが、父には借金しかない事が明白な場合、父の分だけ相続放棄をして、祖父の分は相続を承認することができるでしょうか?これは、上記で述べたように、それぞれの被相続人ごとに個別に考えることができるので、祖父の相続は承認しつつ、父の相続を放棄することができます。

ただし手続きの順番には注意

ただし、手続きの順番には注意が必要です。

父には借金あることが明白なため、早々に相続放棄をした段階では祖父の相続を承認できなくなります。祖父の相続人としての地位は、父からの相続を根拠としているので、先に父の相続を放棄してしまうと、祖父の相続人として地位が失われてしまい、祖父の相続についての話し合い(遺産分割協議)に参加できなくなるからです。

そこで、祖父の相続について遺産分割協議書で日付を明確にしておけば、祖父の相続の承認が父の相続放棄より先に行われたことがはっきりするので、祖父の相続だけ承認することができます。

祖父の相続の承認後であれば、父の相続を放棄しても父の相続放棄の効果は祖父の相続の承認がさかのぼって無効になることはありません。祖父については、相続を承認する形で確定したのちの、父の相続放棄になるので、それぞれの相続の個別の判断が尊重される形となります。

また、祖父が亡くなる前にすでに父が死亡している場合には、孫は祖父の代襲相続人としての地位が確定しているので、父の相続を放棄した後に、祖父の代襲相続を承認することができます。

最後に祖父の分だけ相続放棄ということもできます。祖父の相続放棄をしても、父の相続人の地位が維持されるからです。

限定承認について

限定承認について

祖父の死亡後に相続放棄か承認の結論が出ないまま、父が死亡した場合、祖父の相続については、祖父の他の子と、父の妻(配偶者)や子(孫)が共同相続人になります。

そのため、祖父の他の子たちは父の死亡により父の妻子と共同でないと限定承認ができなくなります。上記2の理屈から、父の妻子が祖父の相続について限定承認をした後に父の相続放棄をしても祖父の限定承認は無効になりません。

父の相続放棄が先になされれば、祖父の相続人は父の他の子どもたちだけになります。

まとめ

祖父が亡くなって間もなく(相続放棄や承認の結論が出ないまま)父が亡くなる場合の父の妻子は再転相続人と呼ばれます。これに対して、祖父が亡くなる前にすでに父が死亡している場合の父の妻子は代襲相続人と呼ばれます。

両者の違いは、祖父の相続が父の相続に依存しているかどうかです。前者は父の相続があっての祖父の相続であるため、父の相続を先に放棄したあとに祖父の相続を承認することができません。後者の代襲相続の場合は、父の相続に依存することなく祖父の代襲相続人としての地位が確定しているので、父の相続を放棄した後に、祖父の相続を承認(祖父の遺産分割の話し合いに参加)できます。

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