コラム

相続放棄の検討中に病院から入院費の支払い請求が来た時の対処方法

2021.05.11

相続放棄の検討中に病院から入院費の支払い請求が来た時の対処方法

こんにちは。船橋・習志野台法律事務所です。

入院中の人が亡くなった時、病院はその家族に向けて入院費の請求をすることが一般的です。その際、多くの人は何も疑問を持たず、病院への支払いを行っているでしょう。ただし、もし故人の遺産について相続放棄を考えているようなら、支払いを行わない方が良い場合があります。

ここでは、相続放棄時、入院費の支払いを行わない方が良い理由と実際に入院費の支払い請求が来た場合の対処方法についてご紹介していきます。

相続放棄をする場合、被相続人の入院費は支払うべきなのか

相続放棄をする場合、被相続人の入院費は支払うべきなのか

まず、故人の遺産について相続放棄することを念頭に置く場合は、病院から入院費の支払い請求があったとしてもそれを支払う必要はありません。

なぜなら相続のルール上、入院費は他の負債などと同様に被相続人(故人)本人の負債であるとみなされるため、相続放棄する人がそれを引き継ぐ義務はないからです。つまり、入院費用を支払う義務があるのはあくまでも故人であり、筋としては故人の財産から病院への支払いを行うのが正しい、ということになります。

しかしだからといって、相続放棄する遺族が故人の預金から入院費の支払いをするのはおすすめできません。なぜなら故人の預金を本人の死後に扱う行為は、法律的に「被相続人の財産を自分のものとして扱う意思がある」と示すことに他ならないためです。

こうした「遺産相続する意思を行動で認めること」を、法律用語で単純承認と呼びます。単純承認が認められる代表的な行動としては、次のようなものが挙げられます。

単純承認例

  • 相続放棄の手続きを、被相続人の死後3カ月以内に行わなかった
  • 被相続人の預貯金を利用した
  • 被相続人の財産(不動産、車等)を処分・換金などした

単純承認は相続手続きにおいて非常に重要視される要素であり、認められた理由がたとえ過失であったとしても、相続放棄ができない事態に陥る場合があります。そのため、相続放棄を検討している場合は無意識に単純承認を行ってしまわないよう、万全の注意を払う必要があります。

入院費を支払わなくてはいけないケース

入院費を支払わなくてはいけないケース

前段で述べたように、入院費はあくまでも入院した本人の負債であり、相続放棄をする人がそれを支払う義務はありません。ただし、場合によっては入院費を支払わなくてはいけません。

入院費支払いの保証人になっている場合

入院時などに入院費用支払いの保証人になっている場合は支払い義務が発生します。

保証人制度は遺産相続云々とは全く関係のない、負債の支払い義務に関する制度です。そのため、入院費用の支払い保証人になっていた場合は、たとえ相続放棄の意思があったとしても、その支払い義務を負わなければなりません。

一旦保証人になってしまうとその立場から外れることは極めて難しく、基本的には入院費用の支払いに応じる必要があります。相続放棄を念頭に置く場合は、入院費用支払いの過程で単純承認が認められてしまわないよう、十分に注意しながら支払いを行うようにしましょう。

配偶者が亡くなった場合

配偶者が亡くなった場合についても遺産相続の有無に関わらず、入院費用支払いの義務が発生する場合があります。これは民法761条で「夫婦には日常の家事で発生した債務について連帯責任がある」とされているのが理由で、入院が「日常の家事」に該当する場合には、発生した債務(入院費用)を支払う必要が出てきます。

入院が「日常の家事」に該当するかどうかはケースバイケースであり、保険外診療や個室料金などで世帯収入に比して高額になる場合には、該当しないでしょう。

ここでご紹介したいずれのケースも、通常の相続を行うのなら特に問題が発生するようなことではありません。しかし、これらの状況と相続放棄の意思がかち合った場合、法律的に複雑なケースに発展する可能性が出てきます。

状況がよく分からない場合、不安な場合などは弁護士などの専門家に相談しつつ、冷静に支払いを進めていくことが大切です。

入院費を支払う場合は自らの財産から支払う

入院費を支払う場合は自らの財産から支払う

ここまで述べてきた通り、相続放棄を念頭に置く場合は相続を放棄する人に被相続人(故人)の入院費用の支払い義務はありません。しかし、だからといって病院の支払い請求に対して、知らんぷりを貫くのは良心が痛むという人も多いでしょう。

「故人が最後までお世話になった病院に支払いをしたい」「恩を仇で返すようなことをしたくない」と考えるのは、人間としても極めて自然な感情と言えます。

そうした理由から、被相続人の入院費用を支払いたい場合は被相続人の財産からではなく、自分の財産から支払いを行うことが重要です。

なぜなら自分の財産から支払いを行うことで、「故人の財産に手をつける意思がない=単純承認の意思がない」と示すことができるためです。少なくともこうした手続きを取ることで、入院費用の支払いが相続放棄に悪影響を与えることは予防できるでしょう。

ただ、このような手続きを取った場合は、支払い後に受け取る領収書の宛名に十分気を付ける必要があります。もし、ここで故人宛ての領収書を受け取ってしまうなどすると、後々別のトラブルにつながる可能性が出てきます。

【まとめ】相続放棄を検討する際は入院費の支払いにも慎重さが必要

故人の入院費用支払いは道義的にも心情的にも、早く済ませたい支払いの一つです。しかし、それと同時に相続放棄を検討する人にとっては、後々取り返しのつかない事態に繋がりかねない、特に慎重に行うべき支払いの一つと言えます。

うっかり単純承認の要件を満たしてしまわないよう、不安がある場合は弁護士などと相談しつつ、十分に注意しながら支払うことが大切です。

船橋・習志野台法律事務所では来所不要でお手続きが可能です。遠方にお住まいの方でもご対応できますのでお気軽にご相談ください。

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