Column
コラム
相続人の一部と全く連絡が取れないときはどうする?
【事例】
半年前に父が亡くなり、母名義の預金を払戻して私達兄弟2人 で等分に取得しようと思いました。銀行での亡くなった人の預金の払い戻しには、亡くなった人が生まれてから死亡するまでに記載されている全ての戸籍が必要とのことで、全ての戸籍を取寄せました。
これをみたら、私たちが知らない父の子が記載されており、いわゆる隠し子がいたとびっくりしました。銀行からこの隠し子の実印と印鑑証明が必要と言われたので、戸籍の附票から隠し子の住所を割り出して、手紙を送ったのですが、全く返事がありません。
もう、半年も経つのに、母の預金が塩漬けになったままです。
どうすれば相続(預金の払い戻し)の手続が進められるでしょうか?
【解説】
相続人の一部と連絡が取れないことは、法律的に言えば遺産分割協議ができないことを意味します。相続人同士で遺産分割の話し合いができなければ、家庭裁判所へ遺産分割の審判を申し立てることになります。
ただ、家事事件手続法により、いきなり審判を申し立てることはできず、裁判所を通じた話し合いの場を設ける調停を申し立てる必要があります。この事例では手紙を出しても返事がない以上、調停を申し立ててもこの隠し子は裁判所へ出頭しないことが予想されます。家庭裁判所の運用では、1回の欠席だけではすぐに審判に移行しないで、2,3回欠席が続いた場合に、家庭裁判所の調査官が欠席者の意向調査を実施してそれでも出頭しない場合に審判へ移行すること多いです。
今回の事例でも隠し子の欠席が続けば審判へ移行して、法定相
続分に従って、預金を分割して取得する審判が裁判官から言い渡されるでしょう。その審判が確定すれば、審判書とその確定証明書が家庭裁判所から交付されるので、それをもって銀行へ行けば払い戻しができます。
銀行預金も長期間、放置してしまうと払い戻しを受ける権利が消滅する恐れもあるので、相続人の一部と連絡が取れない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停や審判の制度を積極的に利用しましょう。