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遺産分割の審判事例3【不動産の現物分割】

事例について
 土地3つとその敷地上に建物10個が遺産であり、その帰属が争われました。相続開始時の利用状況としては、建物A、Bを長女が単独で建築当初から居住し続け、建物C、F、G、H、I、Jは長男が単独で利用し長男は夫婦でH建物に居住しています。残りの建物D,Eは長女及び長男で共有していました。
 長女及び長男は、長年の間、確執があり、お互いに遺産である全ての不動産を代償金を支払って取得することを主張しました。

解説(審判の経過)
 まず、家庭裁判所の審判では、長女の主張を認め、長男に対して審判確定から4年以内の長女への建物明渡を命じ、長女は代償金を支払って全ての不動産を取得する命令を出しました。家庭裁判所の判断の前提として、土地3つのうち2つの境界が不明確であり、3つの土地を両名に分割取得させるのが困難として、長女の方が、長男より現状利用を保護すべき状態にあることを理由に長女の主張を認めました。
 長女の現状利用の維持を家庭裁判所が優先したのは、長男の居住するH建物に風呂がなく、長女が居住するA建物の風呂を使用していたところ、故障した風呂釜を長女に無断で修理したこと、両名の母が残した遺言書では長女に全ての遺産を取得させることから、退去すべきは長男であるとの結論に至りました。
 しかし、長男が東京高等裁判所へ抗告(不服申立)したこところ、長女が全ての不動産を取得するとした審判が取り消され、3つの土地を評価額に従って両名が等分して分割取得することにしました。建物についても、それぞれが取得した土地上にある建物には当該敷地を取得した相続人の単独取得とし、それぞれが取得した土地の境界にまたがって存在するF及びG建物は両名の2分の1ずつの共有としました。
 まず、東京高裁の判断では、3つの土地の境界は明確であるとして、長男及び長女がそれぞれ分割して取得することができるとの判断であり、ここが家庭裁判所の判断との大きな違いとなりました。また、長男についても相続開始時に72歳と高齢で退去すべき事情がないこと、母の遺言書による意向が現状の長男が建物に居住している状況に優先すべきでないこと(そもそも今回の遺産分割は父の遺産である土地3つと建物10個の帰属をめぐる争いであって、母の遺産は無関係である)、から、長男を退去させる遺産分割は不適当と判断しました。

 この審判例から分かることは、母の遺言による意向や長男長女の確執といった主観的な事情では、長年にわたり不動産を利用している現状を覆す遺産分割を裁判所は認めにくい傾向が強いことです。
 対立する相続人が居住する建物から出て行くことを要求するには、現状利用の維持が違法といえる程度に達していないと裁判所の審判ではそうした要求は認めらない可能性が高いといえるでしょう。

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