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遺産分割の審判例1(土地の代償分割を認めた事案)

【事例】
 本件での相続人は、被相続人の配偶者と、その子ら6名です。ただ、配偶者はその法定相続分を子ら6名に平等に分配する形で譲渡したので、子6名だけで遺産分割の調停が行われました。
 争点は、子6名のうち1人(A)の自宅建物とAが経営する会社の事務所と工場となっている建物3つの敷地となっている土地(本件土地)の分割方法でした。
 もう一人の子Bは、3500万円の代償金を支払って本件土地を単独取得することを主張し、Aは1000万円を支払って本件土地を取得することを主張し、調停は成立しないで、審判へ移行しました。なお、本件土地の評価額は3000万円です。

【遺産分割の審判の経緯】
 第一審の家庭裁判所の審判ではBの主張を認め、本件土地をBに単独取得させ、3500万円を残り5人の子に相続分に従って分配するように命じました。これに対して、Aは高等裁判所へ抗告をして、家庭裁判所の審
判を取り消すよう求めました。そして、A自身が負担する代償金を3000万円まで引き上げる主張をしました。この主張を受け、高等裁判所は、十分な代償金の額と評価して、Aが本件土地上の建物を利用している現状を重視して、家庭裁判所の審判を取り消 しました。そして、本件土地をAに単独取得させ、3000万円を残り5人の相続人に相続分に従って分配するよう命じました。

【解説】
 最初の家庭裁判所の段階では、Aの提示した代償金の額が本件土地の評価額の3分の1で、Aの単独取得を認めてしまうと、Aの遺産分割による取り分が法定相続分を大幅に上回ってしまいます。遺産分割の審判は裁判官が法律(民法)に従って、各相続人へ遺産を分配する手続きである以上、分配の前提となる法定相続分と異なる分配をする判断はしにくくなります。
 そのため、家庭裁判所ではBの主張を認めました。
 もっとも、高等裁判所の段階でAは代償金を3000万円まで 引き上げました。これなら、Aは本件土地を評価額で買い取るのと同じことであり、相続人間の不公平は生じません。そうすると、本件土地上に自宅の建物や経営する工場や事務所を所有するAに帰属させるのが最も合理的であるとの判断になります。

 ここでポイントなのは、高裁段階のAが提示した代償金3000万円は、Bが提示した代償金3500万円よりも低いのに、Aによる本件土地の単独取得を認めたことです。Cに単独取得さ せた方がAも含めて他の相続人が得られる現金が増えるので、その方が各相続人の利益になるようにも思えます。
 しかし、Bが本件土地を取得すると、本件土地上のAの自宅を含む管理している建物の扱いが難しくなります。仮にAが建物を利用し続けることを認めるとしても、新たにAB間に賃貸借契約等を締結する必要があります。また、BがAに対して建物の撤去を求めるならば、Aは自宅の転居を迫られるだけでなく、経営している事業にも大きな悪影響があり、AだけでなくAの事業に関わる関係者全て不利益を受けてしまいます。
 このように、遺産分割の審判になると、表面的な相続人同士の利益だけでなく、遺産分割の結果が社会的に合理性があるかどうかも重要な要素となります。

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